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コラム


2003.05.23 離陸直後にエンジン故障! 〜小型飛行機の緊急着陸方法〜

You're 500ft above downtown Cairns when your engine quits. What do you do ?
-Flight Safety Australia 2003 Jan-Feb (pdf)-

パイパーウォリアー

 オーストラリアはケアンズ空港、小型機パイパー・ウォリア−が太陽の輝く青空に飛び立った。 上昇を続け500フィートを過ぎたあたり、突然エンジンの回転数を示すタコメーターが通常の2500回転から1200回転へと落ちた。 計器を通して異常に気づいたパイロットは「緊急着陸するべきか?」、「目の前に広がる、森林に突っ込むか?」、「故障の回復を試みようか?」と一瞬のうちに考えが巡った。
 無線で緊急呼び出しを管制官に伝えると、エンジンの回転数が幸運なことに、わずかながら回復した。 パイロットは背風(航空機は通常、風に正対して離着陸をする)だが180度旋回して離陸した滑走路に戻ることを決断する。 機体炎上の危険に備え、消防車や救急車が滑走路脇でスタンバイするなか、当該機は、無事、緊急着陸に成功した。
 着陸後、エンジン回転数低下の原因が「スパーク・プラグ」の欠陥と判明した。 この事故原因の検証として、専門家は「パイロットの緊急時による誤判断」を指摘する。
 第一に、このパイロットが「離陸前点検を充分に行ったか」である。 離陸前点検を行えば、おそらくスパーグ・プラグの欠陥がエンジン回転数低下の原因であると認知できたはず。 多少の回転数に起こる異常は、離陸前点検でミクスチャーの混合率を薄くすることにより回復することが出来るが、それ以外は飛行を中止しエンジニアの点検を受けるべきである。
 第二に「セーフティー・ブリーフィング(安全討議)」である。 500フィートでエンジンの故障の場合、離陸後、Uターンして滑走路に引き返すまでの時間は計算上約50秒。 実際 、パイロットが故障時にゆっくり手順を考えられる時間はきわめて少ない。 しかしながら、緊急時に備えて前もって準備をしておけば、安全に対処できる可能性は高い。 セーフティー・ブリーフィングは「離陸上昇時のエンジン故障にパイロットがどう対処すべきか。」瞬時に判断するためのガイドラインである。 例えば、「エンジン故障が起きた場合の緊急着陸場所として、300フィート以下は前方。 300フィート以上は牧場。 600フィート以上では、ゴルフ場。」と言ったように緊急着陸手順を「離陸前のセーフティー・ブリーフィング」によって確認すべきである。
 第三に安全に滑走路へ戻れるかの可否判断である。 仮に故障時に少しでも(最低1200RPM)エンジン出力が残っていれば辛うじて戻れるが、エンジンが完全に停止した場合には不可能である。 しかしながら、緊急時に離陸した飛行機が滑走路へ戻るということは、エンジンがどんな状態でも非常に危険である(特に180度以上、Uターンする場合)。
その理由として

  • エンジンが停止して機体が滑空状態にあるときの旋回は降下率を増加し、滑走距離も短くする。
  • 回転度の増加とともに、失速速度が増加する。
  • 旋回時に機体の翼などの影になり、目標とする滑走路が目視しづらくなる。

 緊急着陸に関して、アメリカのFAA事故防止プログラムよる興味深いレポートがある。
 「レート1の旋回」とは60秒で180度の旋回である。 FAAによると実際に滑走路に方向転換する場合、180度+45度が必要であり、60秒に15秒を加え合計75秒かかる計算だ。 仮にパイパー・ウオリア−で直線で滑空する場合、降下率が毎分500フィートとするとレート1の旋回では毎分600フィートに増加する。
 「レート2の旋回」ではどうだろう? たった30秒で180度の旋回をするが、降下率が毎分750フィートに増加。 高度500フィートから降下すると、わずか40秒で地上へ到達する。
 このデータは完璧にその飛行機の滑空速度を保って降下した場合であって、数ノットでも前後すると滑走距離がたちまち短くなり、目標とする滑走路へ到達できなくなる。 加えて、滑空速度が73ノットで40度バンクを行うと失速速度が56から64ノットになり、わずか9ノットのマージンしか残らず、簡単に飛行機が失速に陥り操作不可能となる。
 こんな危険な状態でもパイロットは無理に滑走路に戻りたいであろうか? やはり緊急時には砂浜、ゴルフ場、牧場等に着陸した方が賢明である。

おわり
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