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コラム


2003.05.30 ヘリコプターのダイナミック・ロールオーバー

DYNAMIC ROLLOVER
-Flight Safety Australia 1999 April (pdf)-

ダイナミック・ロール・オーバー(DYNAMIC ROLLOVER)

 傾斜面の操作中、回避すべきことは何か。我々は一般的にダイナミック・ロールオーバーのことを考える。 航空機乗組員の訓練規定には「操縦士は傾斜地での作業を行う前にダイナミック・ロールオーバーを理解する。」「その可能性を最小限にするため傾斜地の着地限界」などが留意事項として記載されている。
 ダイナミック・ロールオーバーは「ロール運動(横揺れ)で発生し、降着装置(スキッド)のある部分が旋回軸(ピボット)となって、その軸を中心に機体が動的に臨界転覆角を超えたときに起こる。」というのが定義である。 ホバリング中、またホバリング前にあるヘリコプターが横揺れによって臨界転覆角を超えたときに引き起こすわけだが、この角度は各機種のサイクリックコントロール限界にもよるが、ほとんどが15度付近で発生している。
 発生原因は、メインロータ推力とその他の物理的要素に起因し、トリムされていない横方向のメインロータ推力が臨界転覆角を超えるロール(横揺れ)率を発生する。 通常操作状態にあるメインロータ推力は、垂直方向へおおよそ作用するときに横方向へのトリムが始まり、ホバリング時には、ヘリコプターの動きはゼロの状態となって既に横方向へトリムされている。
 しかし、もし、ヘリコプターが接地し、降着装置に旋回軸があった場合、メインロータ推力は横方向にトリムされなければ、ロータ推力の横分力はその旋回軸まわりに力を加えロール運動を引き起こす。 吊り下げ作業中にあるヘリコプタが横流れ(ドリフト)を起こした場合、策が張って同じような反作用が起こり得る。
 ロール率はサイクリックコントロールの変位とコレクティブの入力率量によるがロール率が高いと機体は臨界転覆角へ急激に到達し、ダイナミック・ロールオーバーを引き起こす。 以下は、ダイナミック・ロールオーバーの回避方法である。

ホバリングからの離着陸

 ホバリング状態から地上(着陸)、または地上からホバリング状態(離陸)へ移行する場合、特に細心の注意を払わなければならないのが地表面との接地時である。 サイクリックは横方向のトリムを保つために必要な分だけ調整し、機体の全備重量が降着装置に掛かるまで垂直降下を確実に行う。 ほとんどの機種のサイクリックは、一度、コレクティブを最低位置に下げた場合、中立、または中心位置に置かれる。
 離陸時は先ずメインロータ推力が確実に垂直になるようサイクリックの位置を定める。 そのガイドとして、メインロータの翼端軌跡は、水平線に対して平行でなければならない。 コレクティブ ・ピッチが増加されるとヘリコプターはスキッドライトの状態(接地したときに全備重量がほとんど掛かっていない状態)になる。 風、機体荷重、転移傾向を補うようにサイクリックを調整し、確実に垂直上昇させ、各スキッド( または各車輪)が地表面から離脱したら、さらに調整する。 操作するパイロットはいつもサイクリックの位置に注意を払い、全コントロールの動きは円滑に調和されなければならない。
 サイクリックで横方向のトリムを保ち、離着陸中は地表面に対してスキッド(車輪)の接地点を超えて操作を行ってはならない。 着陸時は航空機の全備重量が降着装置に掛かるまで空中操作を行い、離陸時はコレクティブを上げる前から空中操作を始める。 ダイナミック・ロールオーバーを回避するためには、地表面が平面、傾斜面に関わらずこれらの離着陸のテクニックを用いる。

重量中心

 臨界転覆角は重心位置の移動によって変化する。 ヘリコプターは一般的に異なったCG(Centre of Gravity 重心位置)を持つ。
 つまり、異なった重心位置で異なった臨界転覆角がある。 CGと臨界転覆角は、燃料の消費量、積載荷重にともなって変化する。
 不均一な積載は臨界転覆角を変化させ、機体を重心側(重たい方)へロールを起こしやすくする。 飛行中はCGの変化に意識し、不均一な積載を避け、離着陸操作へ入る前には機体のCGによる影響を考えなければならない。

テールロータ推力

 メインロータが(パイロットから見て)左へ回転するシングルロータ式ヘリコプターのテールロータ推力は高いロール率の一因となる。 テールロータ推力は右方向へ働くため、機体はその方向へのロール傾向がある。 特に右のスキッド(車輪、またフロートなど)が旋回軸(ピボット)となって作用する。(メインロータが右へ回転するヘリコプタ ー、AS350など反対方向へ効果がある。)  これまでに10件中、9件のダイナミック・ロール・オーバーによるアクシデントが、右へ転倒している。 これらのアクシデントの多くは、パイロットが特にホバリングへ離陸する際、サイクリック調整でテールロータ推力(転移傾向)を補っていれば、間逃れていたかもしれない。
 ペダル操作を行う場合は、確実に、また円滑に操作するよう配慮しなければならない。 テールロータ推力がペダルの操作量によって変化するときは、いつでもサイクリックによって横方向トリムの調整をし、コレクティブ増加時は左ペダルを踏むがテールロータ推力の増加にともなって右横力も増大するため、サイクリックも左方向にとって調整する。

横風

 機体に掛かる横風は、ヘリコプターのロールを助長する。 横風における離着陸は、なるべく避けた方がよいが横風で操作する場合は、機体の横方向トリムを保つため、ロータディスクを風方向へ向け、サイクリック調整を的確に行う。 横風では方向コントロールを保つのにテールロータペダルの操作を要する。 再び、テールロータ推力は変化するので、サイクリック操作により必要に応じてトリムされなければならない。

地表面

 粗い地表面、また地表にある障害物は、スキッド(または車輪)の旋回軸としてダイナミック・ロールオーバーを引き起こす一因となる。 何件かのロールオーバーによるアクシデントは 、降着装置が障害物に接触、または近くに障害物がある状態で行った離陸が原因となっている。 アクシデントは、また機体が地表面上で横滑りをしたときにも起きている。 これは機体のロール率を助長し、ダイナミック・ロールオーバーを導く。
 地表面近くで操作するときは、障害物の見張りと着地点の選択に留意する。 不得策に障害物にスキッド(車輪)を接触させて着地した場合は、その状態から無理して離陸せず、エンジンをシャットダウンして障害物からヘリコプターを離すか障害物を取り除いた方が安全である。 的確な飛行前点検の必要性を言及するまでもないが、稀にパイロットが離陸をする際、装着されたロープ、ネット、またはその他の装備品等が降着装置に引っ掛かり、ロールオーバーを引き起こす場合もあるので注意したい。

傾斜地

 傾斜地からの離着陸は、サイクリックコントロールの限界に到達後、継続して運動するならば、ロールオーバーを引き起こす。 限界に達した場合、横サイクリックのトリム修正を保つことはできない。 どんな傾斜面で操作するときも慎重に観察し、機体の限界より大きな傾斜面を回避するよう特に注意を払う。

メインロータの型式デザイン

 無関節型また全関節型ロータ式ヘリコプターのサイクリックコントロールは、とても敏感で急激に高いロール率が現れるが、一度見つけると、サイクリックはロール率の抑止効果となる。 B47、R22のような半関節型ロータ式ヘリコプターは敏感性に欠け、臨界転覆角に到達する前に高くなったロール率を抑えることができない。
 ロールオーバーによるアクシデントの報告では、ほぼこの型のロータシステムで起きている。 ヘリコプターのロータの設計に関して、パイロットが制御できないうちは、その機体特性を知らなければならない。
 半関節型ロータではコレクティブ操作による下げピッチが高いロール率を抑制する最もな有効手段であり、他の型式ではサイクリック操作の敏速な効果で抑制される。 ロータ型式に関わらず、ロール率の修正操作は同じように必要とされ、直観的でなければならない。 (コレクティブの下げピッチと横方向のトリムを保つサイクリックは同時に行う。)

人為的要因

以下の事項が、ヒューマンファクターの一因となる。

  • 不注意
    パイロットは機体の地上 においての位置、また離陸、接地時における機体姿勢に注意を払わなければ、いつでもダイナミック・ロールオーバーの危険に陥る。 地上近くでの操作では特に注意を払わなければならない。
  • 経験不足
    飛行経験の少ない練習生と飛行時間が少ない副機長はダイナミック・ロールオーバーのアクシデントに大きく比例して起こしやすい。 機長はそのコントロールを防ぐため、彼らのコントロールを監視する必要がある。
  • 行動を起こすタイミングの失敗
    回復操作のタイミングはロール率が増大する前である。 ロール率が発達に気がついたときにはロールオーバーは避けられない。 ロール率の増幅に気づいたとき、コレクティブの下げと同時にサイクリックで横方向トリムの調整をする。
  • 不適合なコントロール操作
    このエラーは、ほぼ全てのダイナミックロールオーバーの根源である。 円滑に注意を払ってコントロールすることがダイナミックロールオーバーを回避する鍵となる。 視程目標の損失 地上近くにおいて操作中、視程目標を失った場合は、離陸、復航の実行、また必要ならば計器を使用する。 横流れ中、機体が地上へ接地した場合、ロールオーバーは起こる。

おわり
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